「切ない願い」

AQUAの詩音様から1万ヒット祝いに小説を頂いてしまいました!(上の絵はちりのイメージイラスト)


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「切ない願い」








さわさわと心地よい風が窓から入ってきてフワリフワリとカーテンが揺らめく。
心地よい風に当たり縁側に座っている緑色の背中がゆっくりと風と共に揺らめいている。

「いっやぁ〜、いい天気でありますなぁ」

うっとりとした夢心地な声でケロロが呟きそっと目を閉じると、
テントの前で武器を磨いていたギロロがそんなケロロを見て眉根をひそめ一つため息をついた。

「たるみすぎたな。お前は全く」

「んだよ、い〜じゃん!
夏美殿に課せられたノルマはもう終わったし!天気いいし!風がキモチイし!休んだってい〜じゃん!」

不満一杯にケロロがギロロの放った言葉に抗議の声をあげると、
ギロロはギロリと少し怒りの含んだ瞳でケロロを睨みつけた。

「その余った時間で、侵略作戦を考えんか!!」

「そんな事言わずギロロのどう?気持ちいいよ〜」

ケロケロ笑って自分の隣の床をぽんぽん叩くと、
ギロロは眉間に皺をよせ何か言おうと口を開いたがフゥとため息をついて手に持っていた武器をテントにしまいケロロの横へと座った。
ケロリとそんなギロロの様子を見てケロロが嬉々として笑みを浮かべる。
さわさわと二人の身体を優しく撫でるように風が通り過ぎていく。
空は透き通るように蒼く、
時は和やかにすぎて二匹は自然と笑みを浮かべていた。

「本当にいい天気であります。ずっと・・・このまま・・・」

ポツリと穏やかに呟くケロロの言葉に、
ギロロは一瞬、瞳に哀しい光を走らせたがすず目を瞑って「ああ」とケロロに同意して頷いた。
そんな二人の背中を画面の向こうで眺めている人物がいた。

クルルである。

何を考えてるのかただ無表情で黙って画面に映る赤い背中と、緑の背中を見つけている。
ソッと手を伸ばし緑色の背中をなでクルルはククッと低い笑い声を発した。

「・・・何をやってんだかネェ。オレは・・・」

クルルは双呟いてブツリと画面を消し椅子に深く座った。
メガネの奥で瞼を閉じると浮かぶのは赤い背中と寄り添うようにいる緑色の背中。
チクリと鈍い痛みが胸に走りクルルはククッと自嘲めいた笑みを浮かべゆっくりと暗い闇のなかへと消えていった。




「で?またクダラネェものか?」

目の前で瞳をウルウルさせながら自分を見つめるケロロをクルルは冷たい瞳で見つめる。

「くだらないってなによ!人が真剣に悩んでるのに・・・。クルルの陰険!陰湿!陰鬱!」

「・・・褒め言葉にしかキコエネェナァ」

ククッとイヤ〜な笑みを浮かべギシリと椅子を鳴らし、
頬杖をつきながら自分を見つめるクルルの視線にいつもと違う雰囲気を感じケロロは少し後ずさった。

ー??クルル。どうしたんでありますか?

「・・・・・・アンタ、いつまでこんな茶番劇続けてるつもりなんだ?」

「!!?」

クルルの紡ぎだした言葉にケロロは驚愕した。
一番、聞いて欲しくない、言ってほしくない言葉をクルルが自分に問う。
動揺で震える身体をぎゅっと片手で抱きしめケロロはフッとクルルから視線を逸らす。

「な、何のことでありますか?クルルの言っている意味わかんな!」

「言えよ。
どんな事をしても、オレを道具として、
機械として、利用してかまわねぇから。
アンタのホントの心、見せろ。アンタがホントに望んでいること言え」

ケロロの言葉を遮るようにクルルは急にケロロの身体を抱きしめ、
囁くように、だが何処か切羽詰った声でケロロの耳元で呟いた。
ビクリと身体を震わせ、
大きな瞳を更に大きく開き自分を驚愕の表情で凝視するケロロにクルルはククッと笑みを零した。

「言えよ」

ボソリと念を押すように呟くクルルにケロロは慌ててクルルの身体を突き飛ばし。

「ほ、ホント!クルルって嫌なやつであります!!
い、言った侵略兵器、すぐに必要だから三日で仕上げてね!!!」

早口でクルルから目を逸らしながらケロロはそういい残し脱兎のごとくクルル・ラボから出て行った。
残されたのはケロロに突き飛ばされた拍子に床へと倒されたクルル。
ゆっくりと立ち上がりそっと自分の両手を見る。
手に残るのはケロロを抱きしめた時に感じたぬくもりが僅か。

「クックッ、ク〜クックックッ。ザマ〜ネェナァ」

ケロロから聞きたいのはただ。
ケロロの奥底に眠る本心だけ。
ソレだけが聞きたくて聞きたくてどうしようもないクルル。
だから言いたくもない台詞を、
見たくも無いケロロのあんなにもツライ顔を見てまでも聞きたかったのに。

「オレには欠片も見せてくれネェのかよ、隊長」

ボソリと小さい声で呟きクルルはゆっくりと椅子へと倒れていった。





ただ願うのは

アンタの心が知りたいだけなのに

何で

ソレさえ叶わないのだろうか





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上の絵は、小説の一番好きなシーンを勝手に描かせて頂いたものです。
クルルの切ない心が表せてるかどうか分かりませんが…。
なんか、画面の軍曹の背をそっと指でなぞる曹長が好きでv

ケロロのことを知りたくてたまらないクルル、言われずとも察している親友ギロロ。
という図がステキでした。
愛されてるなぁ、ケロロ。

詩音様、お祝いをありがとうございました!


(2007.08.31)