「The king of the instruction. 」

相互記念にA lie laughter.の茲祢様から頂いたステキクルケロのお礼に描いた上のクルケロに。
なんと茲祢様が小説をつけてくださいました!

うわー!うわー!
スゴイです。
自分の絵に小説がつくのって、すごい嬉しいですね! しかもカッコイイですよ!?
有能な隊長サマと有能な参謀サマですよ!
単純にカッコイイ感じにしようとあまり考えずに描いた小道具や背景にも、ちゃんと意味をつけてくださってます。
ちゃんと場面になってますよ! すごい!!

茲祢様、ありがとうございました!



----------------------------------------------------------------

戦うは駒達
動かすのは、願わくば
貴方の言葉で

どうぞ御命令を。
剣を抜き、死に行きます。







The king of the instruction.








勝ち目など、最初からなかった
意地と欲が招いた戦は、罪のない人々を食らい、歯向かってくるものを飲み込んで、ただその闇を広げて行った
最初はケロン軍人は五千人いたのに、今じゃ二千あまり
当てにならない上層部の情報に、お飾り隊長しかいない
死に行けと言われたも同然の戦争
絶望のなか、通信部に入ったメールは

「新隊長、作戦通信参謀、2名の応援を向かわせる」

神でも来るのか?
血と死の匂いしか漂わない基地の中
死を待つのみの自分達へ今さら新しい隊長、作戦通信参謀
この最悪の戦況をどう変えるというんだと
自嘲すら浮かんだ軍人達の前で、ドアが開いた


「お待たせしたであります。皆」
「クックッ、こりゃまさに戦意喪失ってやつだなぁ」

鮮やか緑に卑しい黄色が、モノクロの基地内に色をつけた

「さぁ皆、勝ちにいくでありますよ」
「サー・イエッサー!!」

新隊長の一言に、兵達は声をあげた




「まぁったく、よくこんなデータで二千人持たせたなァ、さすがケロン軍の兵器」
「前の隊長もまだまだだね、やっぱり我が輩じゃないとダミなんだからぁ」

敵の惑星はケロン星からやく3光年先にある、ネズミ型の宇宙人がいる「モウス星」
ケロンに比べて化学力は遥かに下だが、兵の数と野蛮差はケロンを凌ぎ、更に国への忠誠心が強いためにスパイは送り込んでもたいした意味がない
前の情報部はハッキング技術がなかったのか敵のデータはほとんどなく、ただ踊らされていただけだった

「さて、隊長ォ、ハッキング終わったぜぇ…次はもうちょい難しいのがいいなァクックックー」
「えっ…?」

隊長室での作戦会議に出席していた若者が、クルルの言葉に目を見開いた
ケロロとクルルが基地について約一時間
その中で二十分は二人に基地内の案内で、結局クルルが本腰を入れてハッキング活動しだしたのは四十分程度だ
前の情報部が三日以上かかって出した資料の3倍以上のデータがそこにはおいてあった

「こんな短時間で…」

思わず声をあげた若者に、クルルはニヤリと笑いかけた

「ククッ…俺様を誰だと思ってんだァ?」
「す、すいませんっ」

顔を赤くし敬礼をした部下にまた軽く笑い声をあげると、視線をケロロに投げた

「で?アンタの欲しがった手札は全部そろえたぜェ、あとは御命令を、ケロロ隊長殿」
「ゲロゲロ、そいじゃあいっちょおっぱじめるでありますかぁ」

隊長の椅子に座っていたケロロが立ち上がり、すっと背筋を伸ばす
瞬時に張り詰めた空気に、クルル以外の兵士たちは思わず己の姿勢をただした
これが隊長というものか
前の隊長の時とは大違いの緊張感に、自然と握り拳に力が入る

「こちらの兵は二千三百八十九。あちらの兵は八千。敵は充分。それだけいれば一人五人は狩れるであります」

ニヤリと笑んだ隊長に、兵士の一人がぞくりと背筋を震わせる
なんて言い方をするのだろう
狩れるとは
まるで猫が獲物で遊ぶ時のような楽しみで仕方ないといった顔で、ケロロはゆっくりと歩み出した

「数が多けりゃいいってもんじゃないって事を、骨の髄まで叩き込んでやります…クルル参謀、敵の見取り図を画面に」
「りょーかい」

ゆるゆるとクルルが敬礼をしたのと同時に、ケロロの右横に白いスクリーンが天井からするすると降りて来て、画面いっぱいに敵の基地の見取り図、そして今敵がどのような陣営をとっているかの図が映し出された

「敵の戦力の元。つまり兵器や食料は全て基地の地下。地上から五十三メートル下にあるであります。まずはそこを爆破し、ネズミ共を燻り出すであります。爆破にはクルルが作った、この虫型爆弾で充分でありましょう」

倉庫が映ってる場所を指で摘んだ小さいハエ型爆弾で軽く叩き、ケロロは部下達を見た

「あとは各自これから使命する場所で待機し、逃げて来たネズミを退治するだけ。簡単でありましょう?」

優しそうな目元からは想像もできない言葉を零しながら、ケロロは目を細める

「残りの兵を集め、今ここにいる君達を隊長に小隊を八つつくるであります。基地を囲むように第1番小隊から第4番小隊までが待機。残りの第5番小隊から第8番小隊は今あるあいつらの陣営を爆破を合図に攻撃するであります。あとは各自『適当』に」

真剣に聞いていた兵士たちからどよめきがあがる
それを聞きながらケロロは嬉しそうに笑みを深めた

「我がケロン軍人ならばあとはどうするか分かるでありましょう?信じてるし」
「クックッ…随分熱い告白だねェ」
「我が輩部下は皆愛してるでありますよ」

クルルの言葉にケロロは少し笑うと、両手を思い切り机にたたき付ける
いきなり上がった大きな音に、皆がケロロを振り返った

「さぁ…害虫駆除であります」

ニヤリと笑うケロロに全員が敬礼を帰した




「隊長、全員配置ついたぜェ」
「ご苦労であります」

本当におざなりに作られたという感じの通信室に、クルルとケロロはいた
椅子の代わりに無造作に置かれたボックスに腰掛け、愛用のノートパソコンをいじるクルルと背中合わせに、ケロロは床に座りボックスに背を預ける
隊長と参謀だけに至急されたマントと帽子を持て余しながら、ケロロはクルルの腰辺りに頭をピトっとつけた

「さっすがクルルー、相変わらず良い仕事してますなぁ」
「褒めてもなんもでねぇぜェ…クックッ」
「ちょっと!我が輩真面目に褒めてんだかんね!」
「はいはい。御褒めに与かり大変恐縮であります。我が隊長殿」

大袈裟な口調で似合わない台詞を吐くクルルに思わずふきだしてケロロは振り返った

「そーそー。素直なのは良い事であります」

部下達が待機して命令を待つ映像が映ってるクルルのパソコン画面を覗き込み、ケロロは満足気な表情を浮かべると、次はクルルの顔を覗き込んだ

「準備良いー?」
「OK、OK。あとは祈るだけだ」
「ゲロ?何にでありますか?」
「決ってんだろ?我らが、愛しの隊長様に、だ」
「…ゲロゲロリ。上等であります」

楽しくて仕方ないと言うように、二人で笑うと
どちらともなく軽く唇を重ねる
ゆっくりと唇を離すと、ケロロはくすりと笑った
あぁ、本当に良く笑うとケロロを見ながら
クルルは命令を出すためのマイクのスイッチをonにする

「あーあー、聞こえるでありますか?」

クルルから渡されたマイクに、ケロロはおどけた様に話し掛ける

「皆のもの、準備は万端。総員『適当』にやるであります!」

ケロロが横にいるクルルに視線を向ければ、相変わらずあの嫌な笑みが見えた

「命令!!…ブッ殺せ」

ケロロの声がやんだと同時に、外で大規模な爆破の音が聞こえた
クルルがマイクのスイッチをoffにすると、ケロロは愉快そうにクルルに寄り掛かる
クルルはケロロを好きにさせときながら、この隊長に狙われたモウス星に同情して、またクックックッと笑った




モウス星から帰還したケロン軍は二千三百八十九人
後にこの戦いは、ケロロの伝説の一つとなった





end


(2007.08.03)