なんと、遊郭パロの続きを頂いてしまいましたよ!!
自分のが消化不良だった分、張り切って絵を付けさせてもらってしまいました。





「なあ……アンタのこと、自由にしてやろうか?」
本気とも冗談ともつかぬ声音でクルルが言う。「今度カレー食うか?」と変わらぬ声で。
「……自由にって、どうやって?」
「俺は医者だぜ。そうだな。例えば、仮死状態になる薬を使うとか」
「何だか失敗の香りがぷんぷんする作戦であります」
「くくっ……まあな」
「それに、クルル先生にそんな危ない橋を渡らせたくないでありますよ。
 いつかここを出られるなら、堂々とお天道様の下を歩きたいから……二人で」
「……そうかい」
俺はアンタを独占できるなら、お天道様なんてクソ喰らえだけどよ。
真っ当な方法で自由の身にするというなら、身請けしかないだろうが……。
おそらく法外な値がつくだろう。ただの医者が作れる金子じゃあ事足りまい。
それきり二人の間に、この話が出ることはなかった。




そして半年後。
「……どうしたんだろう、最近クルル先生がちっとも来ない」
仮病を使ってもみたが、来たのは見知らぬ、年寄りの医師だった。
楼主にそれとなく聞いてみても、曖昧な表情で「あの先生はもう来るまいよ」と言うばかり。
……見捨てられた? いや、もともと無理な恋だったのだ。
全てを諦めてみれば、ただ機械的に日々の勤めを果たすことは容易かった。
あの人でなければ、他の男なんて皆同じ。
「喜べ、おまえに身請けの話が来たぞ」
「身請け…?」
嬉しい話のはずなのに素直に喜べなかったのは、ここを出たら二度とクルルには会えないと思ったからだ。
それでも、自分を身請けしようという男には、感謝を伝えねばなるまい。
「ありがたいお話……感謝するであります」
「……そう堅くなる必要はない」



旦那様となる男は、公儀のお役目をもつという噂の、ガルルという寡黙な男だった。
確かに馴染みの客の一人ではあるが、いつも無表情に淡々と肌をあわせる様子からは、そこまで自分を気に入ってるとは想像できなかった。
「どうした、顔色が悪いな」
「大丈夫であります」
「医者には見せたのか?」
「いつものお医者様が最近来てくれなくて……」
そこで男は「ああ」とうなずいた。
「クルルという医者だろう」
「知ってるでありますか!?」
「あの男なら、私が捕らえたよ」
「……捕らえた?」
「ご禁制の薬を上流階級のお方達に高く売りつけた挙句に、それを種に恐喝まがいのことをしたらしい」
「うそ……先生は、そんな人じゃ……」
「ああ、確かにそう悪人には見えなかった。いったい何でそれほど金を必要としていたのやら」
「お金……」
―――いつかここを出られるなら、堂々とお天道様の下を歩きたいから……二人で。
「あ、あ、あ……」
自分のせいだ。クルルはきっと、身請けの金を貯めるために、らしからぬ悪事に手を染めたのだ。
がたがたと震えだすケロロに、ガルルが顔色を変える。
「おい、どうした?」
「それで……あの人は?」
「島流しになったはずだが……おい!おい、しっかりしろ!」
声にならない叫びをあげて、ケロロは気を失った。









「私の見立てどおりだ。これからもよい働きをしてくれ……クルル」
「あんたには借りを作っちまったな」
「ふふ……ギブアンドテイク、というヤツさ。役に立たない男を助けるほど酔狂じゃない」
「……あいつは元気か?」
「誰のことかね」
「わかってんだろ。あんたが身請けした……」
「ああ、ケロロという遊女なら死んだぞ」
「なんだと…!」
「何を怒っている。遊女の代わりなどいくらでもいるだろうに。そうだ、代わりに女を紹介してやろう」
「ふざけるな!」
怒気をはらむクルルを見て、ガルルはにやりと笑う。
「おまえにぴったりの女がいる。うちの女中だ。家事は完璧だが……男運は無いようでね。
 島流しになった恋人をずっと待っているのさ。その男以外にはカレーを作りたくないそうで、
 主人の私がいくら頼んでも、カレーだけは我が家で食えやしない」
「……」
「心当たりが?」
「……他愛もない約束だ……今度カレーを食おうって」
「……先生?」
背後からおずおずと呼びかける声。振り向かずとも、声の主がわかった。



「遅いでありますよ。ずーっと待ってたのに」
「悪いな……野暮用でよ」
「ばか……」
それ以上、言葉はいらなかった。
涙の再会を見届け、一人立ち去る男の姿。
「やれやれ、とんだ狂言回しだな」
そうつぶやく男の横顔は、何故か嬉しそうだった。

FIN







お気楽ケロッ!と生活のけろっとさんから、頂いてしまいました!
まさかの! あの遊郭パロの続き!!
ハァハァ…
悲恋!悲恋!
そして逆転ハッピーエンド! お兄様、にくい!!

ケロロの願いの為に無茶しちゃうクルルにキュンとし、自分の発言のせいで想い人を失ってしまうケロロに切なくなり。(クルルのばか! ちゃんと危ない橋を渡らせたくないってトコも聞いて!)
そして私の希望を思い出して(笑)付け足してくださったという、後半のハッピーエンド展開に幸せモエました!vv
何度読んでもキュンとしますv
いやぁ、ベタはいいですねぇ。いいよいいよ〜。

けろっとさん、ホントにありがとーございました!!
まさかけろっとさんがあの話に反応してくれるなんて!

しかし、自分も身請するほど好きなくせに譲っちゃうお兄様、大人すぎ!(しかも淡々としすぎてケロロには気づかれてない始末。不器用な人!)
ニクイねぇ。


↑ ちょっと意地悪してみた(笑)。



↑ 黄緑なのにお兄ちゃん描きすぎたので削ったシーン。

(2010.09.20)