※R18です。18歳未満の方、性的描写に抵抗を感じる方はご覧にならないようお願いします。









LOVE DRUG


 騒ぎの始まりはモアの悲鳴だった。

「きゃああ!」

 日向家中に響き渡った叫びに、みなぴたりと動きを止めて耳をそばだてる。
「お、おじさまぁー、しっかりしてください! 誰か来てくださーい」
 彼女の切羽詰まった様子にただごとではないと、小隊一同と日向姉弟はケロロの部屋へと駈けつけた。

「どうしたの、モアちゃん」
「軍曹さーん何が起きたですかぁ」

 ドアを開けて入ってきたのはクルルをのぞく一同で。
 彼らは部屋のまんなかで仰向けに倒れているケロロとその傍らでおろおろしているモアの姿を見つける。

「ぐ、軍曹?」
「おい、いったいどうしたんだ」
「判らないんです。私がジュースを買いに行って戻ってみたら、おじさまがこんな風に
……それまでは元気にガンプラを作っていたのに、っていうか驚天動地?」

 見れば確かにケロロの手の先には作りかけのガンプラが転がっていた。

「大方また寝不足なんてことじゃあるまいな」

 前例があるだけに全員、またか、と言いたげな顔つきになる。

「で、でも!体がこんなに熱いんですよ? 本当に何かの病気かも……いやぁ、おじさま〜」
「どけこのアマァ〜……ホントだ、全身熱いですぅ」

 モアが額に手を当て、タママが手を握る。よく見れば緑色の体がわずかに上気しているようだ。

「風邪、なのかな」
「でもそんなに急に熱が上がるなんて、インフルエンザかしら? 宇宙人も地球のインフルエンザにかかるもんなの?」

 夏美の問いかけにタママたちも首を傾げる。こんな時、多少なりとも頼りになるクルルの姿がないのだ。

「そんな高熱なら、医者に診せた方がいいかもしれん」
「あんたたちを普通のお医者さまに連れていく訳にいかないじゃない。どうするのよ」

 夏美の言葉にモアが過剰反応する。

「いやぁ、おじさまが死んだらモアはどうすればいいんですか〜」
「縁起でもないこと言うんじゃねぇ、このアマ!」
「うう……今、死にそう……かも」

ふたりの間で激しく揺さぶられているケロロが苦しげに呻いた。 
モアとタママは慌てて手を離す。

「おじさま、大丈夫ですか?」
「軍曹さん、気をしっかり! ぼくがいつでもついていますぅ」

 一同、どうしていいか判らない状況のなか、ゆるゆるとケロロに近づく者があった。
 ケロロの体に触れ、口を開けさせてのぞきこみ、その男はいつものように嫌味な笑い声をたてた。

「ククク〜」
「ク、クルル? ケロロはどうなんだ」
「軍曹さん、死んだりしないですよねっ」
「落ち着けよ、こりゃ宇宙インフルエンザかもな」

 ざわつく一同を見渡し、クルルはリモコンを手にした。

「地球人には感染しないと思うけどな、モアや俺たちは判らねえ。本当に宇宙インフルかどうかも調べないといけねえし、隊長は一時隔離するぜぇ」
 ぽちっと、とふざけた声音の後、ケロロとクルルの姿は消えた。

 その後、クルルズラボの入り口には『立入禁止』の貼り紙がしばらく貼られていたという。




 モニターに映し出されたケロロの姿はだらしなく趣味に浸るいつもの様子ばかりだった。

「ふーん……ネットサーフィンにガンプラ作り。DVD鑑賞と漫画三昧。相変わらずいい生活してんなぁ、隊長〜」

 熱で朦朧とするケロロの頭にコードをつなぎ、勝手にこの数日のケロロの行動を見ていたクルルは呆れたように呟いた。
 無理やり鼻の粘膜からとったサンプルで調べた結果、宇宙インフルエンザの反応は陰性だった。夜更かしの上に床でうたた寝していたことにより風邪をひいたものらしい。

「単なる風邪、だな。手の焼ける隊長だぜ」
「……面目ないであります」

 かすれた声で言い、冷却シートを貼られた顔をクルルに向ける。

「でも、インフルじゃないって判ってたんデショ? みんなには黙っててくれて、ありがと」
「ククク〜、隊長もまだまだ甘いなぁ。俺さまが見返りもなしにアンタを看病すると思ってんのか?」
「え……」

 ぐい、と顔を寄せられてケロロはひぃ、と全身に嫌な汗をかいた。
 この流れは、ひょっとしてひょっとしなくても、自分の身が危ないかもしれない。
 いや、身ではなくて貞操か、この場合。

「クックルくん……本当は優しいの、知ってるよ」
「けなしてもムダだぜぇ。ま、俺さまも病人に手ぇ出すほどがっつきゃしないからよ、とっとと治しな」

 クルルの手に光る注射器にケロロの背にさらに脂汗が流れる。
 プルルちゃんが振り回すのよりは小さいけど、何か、妙に針とがってない? しかもあの中身の色、よどんでるしっ。




「心配いらないぜぇ、クルルズラボ特製の解熱剤だ。こいつをぶち込みゃ熱なんてイッパツだ」
「ゲ、ゲロ〜、待って、我が輩まだ心の準備が」
「んなもんいらねぇよ。力を抜いて、俺に全てを委ねなぁ」
「キィーヤァー……」

 情けないケロロの悲鳴がふっつりと途切れ、ケロロはくたりとベッドに倒れこんだ。





「もう一週間近く経つですぅ。軍曹さん、大丈夫なんですか〜」
「うーむ、判らん」

 ラボの入り口でタママとギロロが『立入禁止』とナルトマークの署名入りの貼り紙を睨みつけていた。タママの言う通り、クルルがケロロを隔離すると言ってからもう五日が経っている。
 あれ以来クルルも姿を見せない。ケロロが無事に回復したのかどうかすら、まったく判らないのだ。
 こうしてドアの前まで来て声をかけても、「取り込み中」とスピーカー越しにあっさり言われて追い返されるばかり。

「だが、いい加減出てきてもいいだろう」

 業を煮やしたギロロが激しくドアを叩く。タママもそれに倣った。

「おいクルル! せめて状況くらい説明せんか」
「軍曹さん、生きてるんでしょうね。声だけでも聞かせて欲しいですぅ」

 どんどん、と轟音が響き渡るなか、扉が細く開いた。

「うるせーなぁ、そんなに大声出さなくたって、聞こえるぜぇ」
「クルル!」
 隙間から眼鏡の渦巻きがひとつだけのぞいている。

 ギロロたちは思わず後ずさった。

「ケ、ケロロはどうした。何か重大な病気だったのか」
「ククッ、単なる風邪だったんだが、菌が腹やら頭やらに来ててなぁ。完治するまでにちっとばかり時間がかかったなぁ」
「それで、今はどうなんだ」
「もう一日二日静養したら外に出ても大丈夫だろ。だからもうしばらく待ってなー」

 それ以上の質問は拒否、とばかりにドアが閉まる。
 どうにもこうにも釈然としないが、ふたりは仕方なくラボを後にした。






「隊長ぉ、気分はどうだい?」

 クルルが近づいてきて、ケロロはゆっくりと目を開けた。
 黄色い影がぼんやりとにじむ。

「のど、乾いたであります」

 返事はなく、ぼうっと寝そべっていると唇が塞がれた。
 暴れかけるのを押さえつけられ、口のなかに冷たい水が流れ込んできてケロロは抵抗をやめてクルルの頭に腕を回した。

「ん……っ」
 水がなくなると、クルルが舌を差し込んでくる。軽くかむようにして応えると、クルルの腕が体を抱きしめた。




「まだ、するでありますか?」
「やめて欲しいって顔はしてねぇよな」
「こういう機会って案外ないでありますから、ちょっと……嬉しいであります」
「アンタも、けっこうワルだよな〜」
「クルルに言われると、何かフクザツであります」

 視線が絡み合い、どちらからともなく笑み交わす。
 クルルの薬ですぐに熱は下がり、体調もすっかり良くなった。
 そして、当然のようにクルルが代償を求めてきて、ふたりは時間も忘れて抱き合った。
 隊員たちにも、特にドロロ辺りにはうすうす勘付かれている気はするものの、さすがにおおっぴらにして付き合っている訳ではないので、ラボで誰にも邪魔されずにふたりで過ごせるのは妙に新鮮だった。

「アンタの病気もそろそろ口実にはキツイな。これ以上ごまかしてもセンパイたちが踏みこんで来かねねぇし」
「そだね。心配かけちゃったしね」
「でも、今夜はまだいいだろ」
 ケロロにのしかかると、腹の白いところをぺろりと舐める。星の輪郭を舌先でなぞられて、ケロロは小さく息を吐いた。
「ん……クルルぅ」
「もっと足開けよ、隊長」

言われるがままに足を開き、あられもない姿をクルルに見せていると、次第にケロロの感情も昂っていく。
クルルの視線にさらされている所が、じんわりと熱い。

「まだ触ってないのに……やらしいな、隊長」
「あっ、んっ……やぁっ」

 クルルの指が口に入る。飴をしゃぶるようにそれをくわえこみ、ケロロは夢中で吸い上げた。

「エロい顔」

 そう言われても言い返せないケロロはうす目を開けてクルルを見た。かすかに眉間にしわが寄っているのは、気持ちいいと感じているからだろうか。



 ことさらに音を立てて指をしゃぶるとクッ、と低く呻いた。
 次の瞬間、指は引き抜かれ、体をひっくり返されてうつぶせになる。

「あっ」
 ぎし、とベッドのスプリングがきしむ。

「あ、あぁ……っ、クル、ルっ」
「ほら、ちゃんと膝立ててな」
「う、うんっ」

 四つ這いにさせられ、クルルを受け入れたケロロは膝が崩れ落ちないように体に力を入れ、枕を握りしめた。
 突き上げられる度に呻きと、ベッドのきしみがシンクロする。

「――ケロロ」

「ぁ……っ」

 耳元で名前を呼ばれると、ぞくりと背筋に妖しい疼きが走る。
 ずるいよ、クルル……こんな時だけそんな声で呼ぶなんて、ホントずるいであります。
 こういう時しか聞けないから、離れられなくなる。その声で階級でも役職でも色でもなく、名前を呼んで欲しいから、全てを捧げてもいいと思ってしまう。
 クルルの腰の動きとケロロを握りしめた手指の動きが速くなり、ケロロの頭のなかは真っ白にスパークする。意識が高みに登っていくような感覚とクルルの熱い吐息を背中に感じて、まぶたの裏で虹色の光の粒が弾けた。

 クルル……。






 体が離れてもケロロは珍しくしがみついてきたまま手を離そうとしなかった。

「おい、どうしたんだよ今日は。まだシ足りないってか」
「……そうじゃないであります」




 しばらく黙って顔を寄せていたケロロはやがてぽつりと呟いた。

「クルルは……もしも我が輩がキライになったらもう看病してくれないでありますか」
「は?」

 あまりに唐突な問いかけに、自分でも驚くほど気の抜けた声が出た。でも当のケロロは至って真剣なようである。

「だって、注射する前に言ったジャン。『見返りもなしに看病はしない』って。それって、こういうことしなくなったら、その……」
「ああ」

 からかうために何気なく放った一言をずっと気にしていたのだと気づく。
 なんだよ、あんなこと気にしてたのか。俺が意地悪言うのなんていつもじゃねぇか。
 それでもケロロは至って真面目な様子で。

「今の状態でクルルと別れちゃったりしたら、って思って……それで」
「不安になった訳だ、隊長は」
「う、うん……」

 今度は熱のためでなく頬を赤くしたケロロは恥ずかしそうにうなづいた。

「本っ当にアンタ、バカだな」
「ゲロっ、人が真剣に言ってるのに何よ、その言い草」
「アンタはどうよ? 俺と別れたいって思うことあんの」
「そっ、そんなこと……考えたこともないであります」
「だったらいいじゃねぇか」
「よくない!」

 がば、と身を起してクルルを見下ろすケロロは今にも泣きそうにその黒い瞳を潤ませていた。




「クルルってば気まぐれでわがままで陰険で何考えてるか判らないから」
「……オイ」
「だから、ちょっとしたことでも不安になるであります。いつ気が変わるか、我が輩には判らないし」

 泣きたいのと怒りたいのが混ざったような表情で力説するケロロが可愛くて、クルルは緑の腕を引きよせた。

「ゲ、ゲロ」
「アンタはまだ俺さまが判ってねぇな」
「な、なにそれ」
「俺はきっとアンタが思ってるよりしつこいぜ……手放すつもりなんざないから、覚悟しとけよぉ?」
 底が浅いようで、果ての見えない深淵を抱えているのはそっちじゃないか、と思いつつその体を抱きしめる。
 ケロロは安心したのか腕のなかで力を抜き、可愛らしい吐息を洩らした。
「あ……」
「な、なに? どうしたでありますか?」
「またムズムズしてきちまった……も一回しよう」
「なっ、なにそれ!こんなことには体力あるんだからっ」
「しょうがねぇだろぉ、隊長より若いんだから」
「じゃあいいよ、やれば!」

 キスをすると言葉ほどには嫌がっていないのが判る。
 やっぱり底は浅いのか、と思いつつケロロの肌を撫でる。頬にかかった吐息がくすぐったくて、クルルはすぐにその刺激に身を任せる。
 あったけぇな、隊長の体。まだ当分、これは俺が独り占めしてていいんだよな。風邪ひいたって倒れたって、俺がすぐに治してやるから、そばにいてくれよな。

「クルルぅ……好き、であります……」

 頬を染めて震えながら囁くケロロが心から可愛いと思った。

「んなこと、判ってるぜ」

 素直に好きだとか愛してるだなんて言えないけれど、今はこのお調子者の隊長を独占できる喜びに浸るクルルだった。













THE ODESSA FILEさんの10万ヒット記念にリクをして書いて頂きました!
ヤッフー!!

リクエストをしたのは一人寒い部屋で2月の原稿をやってる時で、も、ほんっと寒かったんで暖まるものが欲しいと、心暖まるほのぼのか熱いエロをリクエストしました。
そして書いて頂いたのがコレ!
どうですか。この可愛いクルケロ。
ほのぼのでラブラブでエロ! 二つ言ってみて良かった! ラッキー!
軍曹エロかわ!

頂いた時はちょうどまた冬の寒さがぶり返していた頃だったんで、一人だけ何度も読んでしっかり身も心も暖まってましたv
アップ遅くなってすいません。
でもラブラブもエロエロも気候なんか関係ないですよね!

いっぱい描きたいシーンがあったんですが、あんまり絵が連続しててもなーと5つだけ。
エロシーンも描こうと思って一応用意してはいたんですが、ない方が良さそうだったので。


クルルもケロロもお互い好きすぎだな!
好きすぎて不安になっちゃうんですよね。
かわいいなぁ。
ああ、クルケロ大好き!



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