玄人


中央母艦。司令官専用プライベートルーム。
シンプルながらも豪華に設えられたその部屋で、抑えられた照明の中二つの影が寄り添っていた。
「会いたかったよ、ケロロ軍曹……いや、ケロロ」
「大佐殿…」
「クリスマスプレゼントは気に入ってくれたようだね?」
「あ、あれは本当に大変だったんでありますよ!?」

ケロロはあの夜を思い出す。
地球で初めて迎えたクリスマスイブ。
自分の願いに多くを問わず、黙って引き上げてくれた大佐。
しばらく会えないのは寂しいが、それでも自分の言葉を聞き入れてくれたことに感謝していた。
その翌日、とっくに引き上げたと思っていた大佐からのプレゼントが届いたのだ。
自立型侵略兵器というとんでもない容器に入れて。

古代から開発を続けてきた、ケロン軍の虎の子兵器。
すっかり気が抜けきっていたとは言え、兵器の圧倒的な強さの前、タママもギロロも自分もやられて、(当時まだドロロは合流していなかったので)ケロロ小隊はほぼ全滅しかかってしまった。
モアがいなければ、どうなっていたか分からない。
エラーで暴走した結果だとは言え、全くタチの悪い悪戯だ。

「茶目っ気だよ」
しれっとそんなことを言う大佐を、ケロロは精一杯怒った顔をして睨み付けた。
「そんな顔しないでくれたまえ。…それとも」
と、そこで言葉を切って、大佐はケロロの顔を覗き込んだ。
「その上目遣いはもしかして誘っているのかね?」
怖い顔を作っていたつもりがそんな風に言われ、ケロロは思わず赤面する。
「ち、違うであります! 我輩、怒ってるんでありますよ!」
「でも気に入ってくれたんだろう?」
プレゼント、と耳元で囁く。
ケロロはくすぐったさに身をよじった。
「離そうとしなかったらしいじゃないか」
「う…」

どうしてそんなことを…と問おうとして、すぐに一人思い当たった。
そもそもあの前日、大佐が本隊を率いてやってくることになった原因はクルルの内通にあった。
クルルはあの若さで、元佐官という異例の経歴を持つ男だ。
大佐とクルル、どういう関係なのかは知らないがとにかく二人は通じているらしい。

ともかく、あの夜の自分の行動は逐一報告済みだということだ。
と、自分でもその行動を思い出してケロロは再び顔が熱くなるのを感じた。
我ながら恥ずかしい。

「どうかね?」
「う………、嬉しかったであります…」
嬉しかったのだ。
死ぬかと思うような、大変な目に合わされても。
わざわざプレゼントを贈ってくれたことが、嬉しかった。
このいつも忙しい人が、自分が好きなアイドルなんて下らないことまで覚えていてくれたことが、嬉しかった。
どうしようもなく嬉しくて。
戦いに疲れて辿った帰り道でも、せっかくのクリスマスパーティー中でも、どうしても手放せなかった。
大佐がくれたクリスマスプレゼント。

「フフフ…いい子だ」
赤面しつつも、俯いて正直に告白したケロロを満足げに眺めると、大佐はケロロの腰を抱き寄せた。
ケロロはおずおずと腕を伸ばすと、黒い男の体に回した。
密着する。
久しぶりの感触に体が震えた。
「あ…、たいさ…」
「しばらく人払いはしてある。気兼ねせずに楽しもうじゃないか」
「はい…であります…」
「力を抜きたまえ」
「は…い…」
ケロロは言われるまま、男の手に身を委ね、そっと目を閉じた。





ラブラブでした(笑)。
だってアニケロのクリスマスの軍曹かわいかったんだもーん。
あんなにプレゼント喜んでくれたら、贈った甲斐があったってものですよ。
クルルの役割は謎のまま。

タイトルはいいのが浮かばなくて、大佐が黒い人ってだけでつけてました。

(2009.04.28)