青天


「俺に言わせりゃあ、つまりこういうことだ。男心と夏の空は入道雲を描いとけばなんとかなるってなぁ」
「意味わかんないし」
「盛り上がってきたってことよ」
「な、なにが?」
くいくい、とジョリリは自分を指さした。
それから、ケロロのことも指さす。

「我輩も!?」
「つまりそういうことだ」
「ゲロ……」

ケロロは疲れた顔で脱力した。
昔から変わらない。ジョリリとは会話が成立しなかった。

ケロロが子供の頃、よく遊び場にしていた近所の空き地に住んでいたジョリリ。
一体何をしていたのか分からないが、ケロロが成人して軍に入った後もふらふらしていたようだ。
実家に戻る度、相変わらず暇そうな姿を見かけた。
ギロロの親父さんとよく卓上ゲームなどをしていたように思う。

まさかケロン星から遙か遠く、侵略目標のこの星で会うなんて思ってもみなかった。
会話が成立しないので追求したことはないが、本当にジョリリはこんなところまで一体何をしに来たのだろう。
地球でもケロン星と同じく、勝手気ままにふらふらとしているらしい。
たまにうちの秘密基地で勝手にドラム缶風呂に入っていたりするから、びっくりする。
だが何故か追い出すことができず、そのままにしてしまうのだ。
ここは前線基地のはずだよな…? 等とギロロに嫌味を言われたりするのだが、ギロロだってジョリリを追い出したりはできないのだからお互い様だと思う。

それにしても一体何をしに…?

「ジョリリさー」
「なんだ?」
「ってゲロ!? いつの間に風呂!?」
ケロロが考え事をしたほんの僅かの間に、いつものドラム缶風呂が用意され、湯煙の上がるそれにジョリリは浸かっていた。
ご丁寧に頭には濡れタオルを載せている。
「知ってるか? 風呂に一番も二番もない。ゴールするまでが、風呂だ」
「はー?」
相変わらず、ジョリリの言うことは分からない。
再び力が抜けるのをケロロは感じた。
そんな脱力したケロロを風呂から伸びたジョリリの手がひょいと掴んで引き入れた。
「若いときの一番風呂は買ってでも入れってな」
「ゲロォーー!? ドラム缶風呂に二人はキツくね!? …あ! あー我輩達、体は省スペースだから平気か…ってそーゆー問題じゃねぇっ」

バシャバシャと大騒ぎして、とりあえず出ようとするケロロだったが、その腕は未だジョリリの手に捕まえられていた。
「むっ」

意外とゴツゴツした手だ、とケロロは思った。
荒事に慣れているような。…そう、まるで数々の修羅場を潜ってきた戦士のような。
………いやいやいや! まるでギロロやガルルの手みたいだなんて。父上みたいだなんて。ジョリリがそんなまさか。多分…、単に肌が荒れているのだ。

だが、それはゴツゴツしているだけではなかった。引いてもびくともしない。
本気で力を入れる。
しかし、万力のようなジョリリの手の力は全く緩む気配がなかった。

ケロロの額に汗が浮かぶ。
いくら普段だらけているとは言え、あの頃の力が失われているとは言え、仮にも現役の軍人が日中ふらふらしているような謎の民間人に力で負けるなんて…
我輩、これでも伝説の男よ?

ジョリリを振り返ると、相変わらず何を考えているのか分からない、涼しい顔をしている。
だがしっかりとケロロを捕らえたままだ。

「ジョ、ジョリリ…」

ケロロの中に初めて怖いという感情が浮かんだ。
頭の奥で警鐘が鳴っている。
ヤバい? なんかコレ、ヤバい?
小さい頃から親しくしていた謎のおじさん。
一時はその訳の分からないスケールと自由さに憧れていたこともあった。
ジョリリ。

「つまりこういうことだ…」

動けないケロロにゆっくりと青々とした髭剃り跡に覆われた口が近づいてきた。








キィーヤァーーー!!

特に解説も思いつかないや(笑)。
謎のおじさん、追っかけてきたんですよ。小さい頃可愛がってた子を!
萌えますよ、ね!

それにしても、ジョリリ台詞難しい! 意味ありげで意味不明な台詞って辛い!
っていうか会話できないの辛い!

タイトルの青天は、ジョリリの髭剃り跡からです。あと、軍曹にとっては青天の霹靂ってコトで。

(2009.04.01)


★オマケ★ (2009.04.28追加)

ケロロ幼少時妄想。

そっと抱き寄せ。
「??」
(ケロロ君、にげてー!)





「ジョリリ、だーいすき!」

…これはナイね!




ジョリリv.s.ガルル(笑)



「人のモンに手を出すな。つまりそういうことだ」
「ほう…」
「ゲロォォォ」