BUMPのラフ・メイカーでクルケロ。
篭もって泣いている部屋に、鳴り響くノックの音。
一体誰だ。誰にだって、こんな顔見せられるか。
応えたのは、脳天気な声。
「我輩ラフ・メイカーであります。笑顔を持ってきたであります。寒いから入れて欲しいであります」
「……ハァ? んなもん呼んだ覚えはねぇよ。帰れ…」
(帰ってくれ…そんなとこに居られちゃ泣けねーだろ)
…コンコン、コンコンコン。
「てめ、まだ居やがったのか…! 帰れつったろォ」
「…………すん」
「…?」
「そんなこと言われたの生まれて初めてであります…。我輩、泣きそうであります…」
(あんたが泣いてどーすんだよ…)

ドアを挟んで背中合わせ。
二人分の鳴き声。
しゃくりあげながら大泣きするラフ・メイカー。
疲れて掠れた声の俺。
「あんた今でも俺を笑わせるつもりかい…?」
「笑わせないと帰れないであります…。それがラフ・メイカーの使命なのであります…」
(なんだそりゃ…)
「今ではあんたを入れてやってもいいと思ったんだが、水圧でドアが開かねぇ…
そっちでドアを押してくれ。カギは開けてある…」
「…おい」
「……おい?」

…まさか!?
今更、俺一人を置いて消えやがった…
信じた瞬間裏切った…!

突如、けたたましい破壊音。
奥の窓の割れる音。
鉄パイプ持った泣き顔のラフ・メイカー。

「笑顔持ってきたであります」
目を真っ赤にしたラフ・メイカーは、俺に鏡を突きつけて言った。
「その泣き顔、笑えるでありますよ」
「…………」
呆れた……が、なるほど。
笑えた。
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