背中が冷たく濡らされていく



なにがあったのか
お前は
俺の背中に、ただただ冷たさを染みこませる


声を上げてくれれば
大げさに喚いてくれれば
いつものように怒鳴って蹴散らしてやれるのに






なあ、お前らしくないじゃないか



お前はへっぽこで、へらへらしていて、へたれていて
誰よりも弱く見えるのに
本当は誰よりも強い



いくらお前が隠したって
そんなこと、俺はとっくに知っているんだ
ずうっと昔から
誰に言われるまでもなく
誰よりも、俺が一番知っている



そんなお前がこんな風に涙を零すなんて






俺は掛ける言葉を見つけられず、ただただ作業を続ける
いつ何があっても使えるように
常に手入れをしているこいつも、こんな時には使えない





抱きつかれた背中は
お前の体温で温かいのに

落ちては冷える涙がその温もりを奪ってしまう






しゃくりあげるのさえ堪えるように
心さえ押し殺すように
お前は黙って頭を俺の背中に押しつける


ただ腕の力だけが強くて


抑えてもなお、背中を伝う細かな振動は
頼りなさげで
はかなげで
まるで、お前がかよわき者であるかのような



俺の中で勘違いを生む










わかっているさ
間違っていることくらい

お前はかよわくなどない





だが勘違いから生まれた衝動は、
存外悪くないように思えた







何より

これ以上苦しそうなお前を放置せずに済むのが良い








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